1月29日(金曜日)に、厚生労働省(健康局疾病対策課・大臣官房厚生科学課)へ、マルファン症候群と類縁疾患に関する専門診療体制の整備と、遺伝子検査等の保険収載に関する要望書を持参し、陳情に行きました。
要望書の内容は、下記4点です。
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1.マルファン症候群と類縁疾患の専門医の育成と専門診療体制の整備
2.マルファン症候群と類縁疾患の遺伝学的研究の継続実施と推進
3.遺伝学的検査(遺伝子検査)と遺伝カウンセリングの保険収載の検討
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4.遺伝学的検査による社会的不利益が生じない対策
マルファン症候群は希少疾患のため、医療者でも実際に患者を診る機会は少なく、診断や類縁疾患との鑑別は現在でも決して容易ではありません。類縁疾患の中には、マルファン症候群よりもさらに早い時期の対処が必要な疾患もあります。症状が多臓器・多器官にわたるため、患者自身をトータルに診て正しい診断を行える医師をみつけることは非常に困難であり、国外であるような専門診療体制の整備は患者にとって大変重要で、国内の拠点整備が望まれます。
現状では、マルファン症候群や類縁疾患の(複数の科が関わる)専門外来は、東大病院と国立循環器病研究センターの2箇所です。
そのうちの1つである国立循環器病研究センター 結合織病外来を担当されている森崎隆幸先生、森崎裕子先生が、この春を以て研究職の定年により、国立循環器病研究センターをご退職されることとなりました。
国内のマルファン症候群や類縁疾患の遺伝子検査は、多くの場合、現在、研究という形で森崎先生の元で行われています。しかし、検査から結果までの時間を考えると、院外からの依頼も含めて、年明けから一時中断せざるを得ないという状況となっています。
国立循環器病研究センター結合織病外来は今後も引き続き存続することとなり、また森崎隆幸先生裕子先生も拠点は変わりますが、今後も引き続き日本のマルファン症候群及び類縁疾患の研究にご尽力くださいます。その点は心強く大変ありがたいのですが、この機会に、専門診療体制の整備(拠点整備)と遺伝子検査等(遺伝学的検査)の保険収載につきまして当会からの要望書を提出しました。
国外ではマルファン症候群等についての専門外来が増えてきており、専門外来担当医が関わりを持って治療研究にも関わるシステムで運用されています。遺伝学的検査を行う際は、検査のみが一人歩きしないよう遺伝専門医が関与する体制が必要であり、各科との連携をはかる体制の整備により、遺伝学的検査を安全に効果的に実施して、患者の治療に役立てていただきたいと思います。
以上のことから、日本でも、今後少なくとも8地方区分(北海道・東北・関東・中部・近畿・中国・四国・九州)に1つのマルファン症候群(類縁疾患を含む)専門外来の設立による体制の早期整備をお願いしました。
また、国外では、マルファン症候群の遺伝学的検査が診療の標準検査で診断の柱となっており、診断ガイドラインに含まれています。特に、類縁疾患との鑑別では非常に大切な検査です。
しかしながら、日本では、遺伝学的検査は診断のひとつの柱であると認識されながらも、現状では、研究費を使用して、研究施設の理解と研究者の努力の積み重ねにより、なんとか継続実施されているに過ぎない状況です。研究以外では患者は、保険適用外の高額な遺伝学的検査を受けるしかありません。
2016年度の診療報酬改定では、新規の指定難病の中で遺伝学的検査が保険収載となる疾患があります。マルファン症候群や類縁疾患の患者にとっての遺伝学的検査が、将来のために、保険収載を含めて患者に益になるよう、充分検討をしていただきたいとお願いしました。
マルファン症候群や類縁疾患の患者にとっての遺伝学的検査は、今後は、よい治療を受けるために必要な検査でありますが、遺伝情報は自らどうにもならない性質もあります。遺伝学的検査によって、患者家族に社会的な不利益がこうじない対策についても重ねてお願いいたしました。
代表理事猪井 森崎隆幸先生 疾病対策課前田課長補佐